細川・小泉両元首相が電気の地産地消で自然エネルギーを拡大する〔8月11日号 環境ビジネス編集部〕

細川・小泉両元首相が電気の地産地消で自然エネルギーを拡大する
環境ビジネス編集部
2014年8月11日号掲載
http://www.kankyo-business.jp/column/008479.php





原発ゼロへの取り組みと自然エネルギーの普及活動を積極的に推進し、原発に頼らない社会への転換を目指すため結成された「一般社団法人 自然エネルギー推進会議」。同推進会議では、「電気の地産地消」をキーワードに、地方での自然エネルギー事業のエンカレッジ・地域需要のサポートをはじめ、原発に依存しない立地地域の応援など多岐にわたる活動を行っている。代表である細川護煕氏に、原発ゼロへの思いや再生可能エネルギーの可能性、同推進会議の意義などについて話を伺った。(聞き手:編集部)


画像編集部
 現在の一連の環境活動に対する理由などを教えてください。

細川
 私を含め、小泉さん、歴代総理にしても、とにかく原発で作る電気は安くて安全だということを言われ、騙されてきた。それで、58基も建ててしまった。そのような不名誉を、私自身も恥じなければならないと思っている。

 東日本大震災で発生した原発事故で降り注いだ死の灰の量は広島の400~500倍の規模と言われている。大量の死の灰が拡散した。事故の反省も、究明もなく、いまでも放射能は拡散し続けている。

 それにも関わらず、再稼働の計画が進み、政府は日米原子力協定を結び外国へ原発を輸出しようとしている。東日本大震災での事故は、いわば文明災だ。反省をもっとしなければならない時に、つい3年前のことも忘れてしまい、方向転換していくことは、日本の将来の文明を考えた時にあるべき姿ではないと思う。

 一方で、ヨーロッパなど多くの国が原発ではなく自然エネルギー、再生エネルギーで国の成長を遂げていこうとしている。日本も原発が全て止まっているこの時期を良い機会だと捉え、思い切って自然エネルギーに舵を切っていけば大きな成長につながると思っている。そのためのサポートを、多くの方に協力を得ながら、微力ではあるが取り組んでいる。

画像

編集部
 具体的にどんな活動に取り組んでおられますか?

細川
 現在、再生可能エネルギーの利用に積極的に取り組んでいる自治体を訪れ、地方活性と再生可能エネルギーの可能性について模索している。先日は、山梨県の都留市に訪問し、家中川小水力発電所を見学した。

 この小水力発電所は、「つるのおんがえし債」という市民参加型ミニ公募債、補助金、一般財源から建設費を捻出しており、今後の分散型発電のあり方を考える上で、大きなヒントをもらった気がしている。

 直径が3~4mの小さな水車が、幅2~3mの用水路でぐるぐると回って発電し、近くでみると意外とスピードがあり、迫力があった。ある程度間隔をあければ何台でも水車を設置することができるという。

 また、スクリュー型水車など、水の流れ方によっていろいろなタイプの水車があり、県産材の木を水車の羽に使用するなど面白い取り組みが行われていた。さらに長く使用しているものには、コケが付着しており、なかなか趣深いと感じた。観光客が来る要因にもなっているらしい。

編集部
 再生可能エネルギーというものは、クリーンなエネルギーの創出だけでなく、優れた観光コンテンツとなる可能性も秘めているということですね。

細川
 特に、水車は間違いなく景観上の観光資源になると思う。それだけでなく地域の意識改革にも大きな変化が起きていることも話を聞いた。都留市の小水力発電は、市民参加型の公募債を利用しているということで、市民の方は「自分たちの水車」という思いが強く、川にゴミを捨てるという行為も少なくなっているという。

編集部
 環境問題において、意識の改革がよく議論されますが、再生可能エネルギーを設置して行動が伴った好事例ということですね。

細川
画像 実際に美しく水車が動いているところを見ると、「ゴミが溜まると水車がとまってしまうので、川にゴミを捨てるのを止めよう」など、そういう気持ちが自然と芽生えてくるのだろう。

 都留市の取り組みを見て、日本は山地が多く農業で利用している、あるいはすでに利用しなくなった水路を活用すれば、大きな発電資源が眠っていると感じた。かつてはいたるところに水車があったということを現地の方に話を聞き、日本は昔から自然と共生していたと改めて感じた。水力発電など再生可能エネルギーを通じて、自然との共生は可能だと思う。

編集部
 自然と共生するということは、地域ごとに根ざした自然エネルギーを活用していくべきだとお考えですか?

細川
 そう思う。自然エネルギー発電というと、メガソーラーのような大規模プロジェクトを連想するケースが多いが、それだけではない。水力、風力、バイオマスなど様々な発電所があり、決してそれらは大規模でない。大分県の八丁原発電所などでは、地熱を利用しているケースもある。地域地域で特性があり、様々な可能性を模索し、それぞれの地域にあった方法で取り組んでいけばいいと思う。

編集部
 これまでは、原子力発電や火力発電など、一箇所で大規模に発電して大量に送電するというやり方がスタンダードでしたが、分散型の発電システムに大きく変えることで、原子力に依存しない形にしていこうということですね。

細川
 エネルギーにおいても、中央集権ではなく、地方分権的な取り組みが必要であるということ。また、何より地方が自主的に取り組むことで活性化に繋がり、いろいろな産業も生まれてくるだろう。

編集部
 それは新しい考え方・方法ですね。これまでは節電や省エネばかり目がいき、供給面に関してはあまり注目されていませんでした。自らが小規模でもエネルギーを生み出すことで生活が豊かになるだけでなく、心までも変化していくということですね。

細川
 自分たちで一生懸命エネルギーを創っていると思えば、使い方も自ずと変わってくるだろうし、都留市では子供たちの環境に対する意識が大きく変わってきているとおっしゃっていた。

画像編集部
 未来の子供たちのため、これからの日本の成長戦略をどうお考えですか?

細川
 今後、少子高齢化社会になり、人口も激減は避けられない。50年後には9000万人に減少し、100年後には4000万人になると言われている。4000万人といえば、江戸時代の総人口に近い数だ。

 その状況に直面した時、今と同じように経済成長至上主義でやれるかといったら、やれるわけがない。外国から労働者を招き入れてもたかがしれている。

 問題は、そのような条件下で、どう活力のある社会を維持していくかということだ。これからくるべき社会の価値観を念頭に置きながら対応していかなければ、痛い目を見ると思う。いままでみたいに電気をつけっぱなしとか、コンビニの電気を煌々と深夜までつけておくなど、とんでもない。東日本大震災の後は計画停電もあり、多少明かりを抑えていた部分はあるが、今では元に戻ってしまっていると思う。

編集部
 我々も意識して抑えて行かなくてはいけませんね。ヨーロッパの街並みと比較すると、日本は明るすぎます。

細川
 卵が先か、鶏が先かという議論になるかもしれませんが、原子力発電のような大規模集中型の発電システムを作るから、みんなが電気を大量に使用する生活スタイルになっている。いわば"電気の地産地消"のような取り組みが推進されれば、使用する側の意識も変化し、電気をあまり使わなくても良い社会に変わるだろう。

 我々は、原発の代わりに全て再生エネルギーで賄おうという話しをしているわけではない。化石燃料だけでは、温暖化問題や大気汚染など具合の悪いことが多いため、再生可能エネルギーを普及させていこうと主張している。現在原発が全て停止している状況の中で、再生可能エネルギーの割合を増やして電力供給をアシストしていきたいと考えている。原発ゼロなど今更言う必要もない自明の話だ。

編集部
 最後にこれからの再生可能エネルギーのあり方について一言お願いします。

細川
 私は、国の大きな姿として「質実国家」ということを常々言ってきた。質が高く実がある社会を作ると。いまでもその志は変わらず持ち続けている。GDPが大きければ良いとか、何%経済成長をしたとか、全て数字を基準として判断するのは、私は間違っていると思う。もっと、本当に質が高くて、実がある社会を目指していくべきではないかと思う。

 その中で再生可能エネルギーというのは大きなウエイトを占めており、地産地消のエネルギー社会が形成されれば、日本が真の「質実国家」に近づく上で、非常に大きなキーワードになると考えている。そのため、地方で積極的に取り組んでいるところに訪問し、元気づけることも私の役割だと思うので、この活動を続けて、できるだけ多くの方を励ましていきたいと考えている。