NAMAENAKIのつぶやき

アクセスカウンタ

zoom RSS 『北斗の拳』原作者・武論尊が語る自衛隊時代、そして、恩人ちばあきおに伝えられなかった言葉

<<   作成日時 : 2013/07/19 09:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

( 2013.07.18 木 )
『下流の生きざま』発刊記念インタビュー
『北斗の拳』原作者・武論尊が語る自衛隊時代、そして、恩人ちばあきおに伝えられなかった言葉
http://www.cyzo.com/2013/07/post_13874.html





画像
                ペンネームは肉体派男優チャールズ・ブロンソンから。
          ブロンソン主演作『さらば友よ』(68)や『ウエスタン』(68)がお気に入りなのだ。


 アタタタターッ!!! 『北斗の拳』といえば、1983年から5年間にわたって少年ジャンプで連載され、数多くのフォロワーたちを生み出してきた一大ロングセラーコミックだ。核戦争後の荒廃した近未来社会を舞台に、北斗神拳の伝承者・ケンシロウと強敵(ライバル)たちとの激闘の歴史がコミック全27巻の中に刻まれている。名作誕生から30年を迎えた2013年、原作者・武論尊氏が新書『下流の生きざま』(双葉社)を書き下ろした。表紙を飾っているのは、何と北斗四兄弟の中でもっとも姑息な男・ジャギ! ケンシロウでもラオウでもトキでもなく、ジャギ流のサバイバル術をフィーチャリングした人生指南書なのだ。「こんな格差社会こそ、ジャギのように生きるべき」と説く武論尊流名語録の数々を堪能してほしい。

──『北斗の拳』連載時はケンシロウとラオウの壮大な兄弟ゲンカの熱気に引き込まれるように読みましたが、改めて読み直すとケンシロウがバットやリンたちと出会って家族のような絆を築いていくドラマ部分に胸が熱くなりました。『北斗の拳』って、いろんな読み方ができる群像劇だったんですね。

武論尊 『北斗の拳』は格闘漫画として単純に楽しんでもらえればいいんだけど、そんなふうに読み直してもらえると原作者としてうれしいよ。でも、連載中は締め切りに追われていて、物語の流れに身を任せるように必死で書いていただけ。感動巨編を狙っていたわけではないんだ。エンターテイメントを目指していると、自然とああいう内容になったんだ。物語を面白くするのは仲間同士の絆だったり、成長ドラマだったりするからね。

──連載時は完全なフィクションとして笑って読んでいたんですが、格差社会がますます進んでいく状況ではあながち絵空事じゃなく感じます。

武論尊 うん、そうだね。まぁ、後づけなんだけど、ヒットして世間から認められたから、そういう読み方もできるのかも知れないね。これがまったくヒットしていなかったら、ただの荒唐無稽な絵空事の世界で終わっていたでしょう。やっぱりヒットし、多くの読者に読んでもらうことで作品って変わっていくもの。漫画って生き物なんですよ。途中で手を抜いたり、水をあげるのをやめると枯れてしまう。常に新しい要素を加え、養分を与えないと死んじゃう。だから読者の目はすごく大事。自分の中でオナニー的に書いたものは成長しない。『北斗の拳』もヒットしていなかったら、まるで違う終わり方をしていたはずですよ。

画像
               人気漫画家・本宮ひろ志との出会いが人生を大きく変えた。
          「本宮も『まさかお前が原作者になるなんて』と未だに言ってますよ(笑)」


──『北斗の拳』は累計一億部突破の大ベストセラーですが、漫画原作者として成功を収めるまでは武論尊先生も下流の人間だった?

武論尊 下流も下流ですよ。中学を卒業して、高校進学する余裕がなくて自衛隊に就職したわけですから。もう一般社会からドロップアウトしてますよ(笑)。最終学歴:中卒ですもん。中学卒業後は、親からお金をもらうことなく生きてきたんです。

──ところが、その自衛隊で出会ったのが、パイロットを目指して入隊し、後に『男一匹ガキ大将』でブレイクすることになる本宮ひろ志! このときの出会いが武論尊先生を漫画業界へ導くことに。

武論尊 そう、アイツとの出会いがなかったら今のオレは存在しなかった。だから漫画原作者として成功できたのは、自分の力でもなんでもない。みんなそうですよ。その道で生き残っている人って、自分ひとりの力で生きてる人はいませんよ。誰かが評価してくれて、力を貸してくれた。そのお陰で生き残ることができた。ひとりの力じゃ絶対生き残れない。

──『北斗の拳』の第1巻でケンシロウと出会うバットも、出会いがなければ冴えないコソ泥で一生を終えていたわけですよね。出会い力は大きい。

武論尊 これはね、持って生まれた“運”としか言いようがない。だけどね、オレが出会ったのはいい人だけじゃないわけですよ。漫画が売れ出してから、オレから数千万円を持ち去っていったヤツもたくさんいるんですよ(苦笑)。オレに美味しい話を持ち掛けて、そのままお金を持って消えちゃったヤツらがね。

──出会い力が大きいほど、面白い人間にも出会うけど、悪い人間にも出会ってしまう。

武論尊 それはもう仕方ないよね。オレ自身にヤマっ気があるから、美味しい話に乗っかって何度も痛い目に遭っちゃうんだよなぁ。(苦笑)。だから、そういった体験も自分にプラスになると考えるしかない。人間だから、こんな目にも遭うんだな。よし、いつかこれをネタにして元を取ってやるぞとね(笑)。


■ジャギこそ『北斗の拳』のキーパーソン!

──『北斗の拳』のキャラクターの中で武論尊先生の思い入れが強いのはラオウだと思っていたんですが、北斗四兄弟の中で常に忘れられた存在であるジャギがお気に入りとは意外です。

武論尊 オレにいちばん近いんですよ、ジャギは。『北斗の拳』のキャラクターの中で、最もズルくて、弱くて、でも意地だけはあるというね。育ちもよくなさそうでしょ? ジャギが登場したとき、「あっ、こいつはオレだ」と思った(笑)。ジャギの弱さやズルさは、本当にオレの内面にそっくり。オレも生き抜くためには少々汚い手も使いますよ。

──思い入れが強い割には、ジャギはあっさりケンシロウに倒されますし、回想シーンにも登場しませんが……。

武論尊 でも、ジャギを考え出したことで、「ケンシロウは“拳四郎”だから、上に3人の兄がいるに違いない」と閃いたんだよ。だから、ジャギは『北斗の拳』の重要なキーパーソン。ジャギがいなかったら、ラオウもトキも思い付かなかった。ラオウやトキは後付けで生まれたキャラクター(笑)。それに、それまで少年漫画誌に登場するヒーローって、みんなスーパーヒーローばかりだったでしょ。初めて登場したイヤらしいキャラクターがジャギだった。はっきり言えば、ケンシロウやラオウはフィクション上の存在に過ぎないけど、ジャギには誰でもなれるからね。

画像
──理想の人物ラオウではなく、ジャギのようにリアル社会を生きてみろ、というメッセージが『下流の生きざま』には込められているわけですね。

武論尊 そういうことです。実社会には歴然とした差別や格差が存在するわけで、理想だけでは実社会は生きてはいけない。下流でもいいんです。下流の人間なら、上を目指していくしかないんですよ。一生、下流のままの人生じゃつまらないでしょ? 格差社会を嘆いていても何も始まらない。なら、ほんの少しでいいから上を目指してみようよと。ちょっと勝負してみよう、自分の上にいるヤツを引きずり降ろしてみようぜとね。そういう気構えを持つだけでも違ってくるはずですよ。ラオウを目指す必要はまったくない。ジャギで充分。ジャギは実社会で勝ち抜く力を持っていますよ。

──かっこ悪いとか恥ずかしいとか口にしてる場合じゃないと。

武論尊 勝ち抜くためには、そんなことは言ってられないですよ。上に上がるには遮二無二にならないとダメ。自分より強いヤツと闘うときはどうすれば勝てるか必死で考えないと。その気合いがないと、下流からは這い上がれない。勝つためにはどんな手を使ってでもやってやる、そういう覚悟ができるかどうか。でも、そんな姿って、とっても人間らしいとオレは思いますよ。

──何だかジャギのことが愛しく思えてきました(笑)。それにしても武論尊先生の作品は『ドーベルマン刑事』や『サンクチュアリ』など、すっごく男臭い世界ばかりですよね。やっぱり10代の頃を自衛隊で過ごしたことが大きい?

武論尊 自衛隊には7年間いたからね。15歳から22歳までの青春と呼べる時期を軍隊みたいなところで過ごした影響はデカいよ。男の友情とかそんなヤワな言葉で表現できる世界じゃなかった。もっとコアな、同じ釜のメシを食った仲というか刑務所仲間みたいなもんですよ(笑)。そんな世界で、かっこいいと思える先輩もいれば、イヤな上官もいる。信頼できる友達がいれば、ちょっと怪しい同僚もいる。無意識に刷り込まれた人間像が多分、作品の中に投影されているんだろうね。本当にね、ヒドい世界ですよ。上官が黒のことを白と言ったら、違うと思ってても「はい、白です」と答えなきゃいけないんです。人間の弱さとか業だとかが自然と自分の中に沁みてくるんですよ。


■ちばあきお先生からの忘れられないひと言……

──不思議に思っていたんですが、武論尊先生のストーリーテラーとしての資質はどのようにして育まれたんでしょうか?

武論尊 小学生の頃は図書館が好きで通ってました。小難しい小説は読まなかったけど、ジューヌ・ヴェルヌの『地底旅行』や『海底二万里』など空想力を広げてくれるような娯楽小説はよく読んでました。それに町に映画館が一軒だけあって、洋画をよく観ていた。学校では映画館に行くのは禁じられていたんだけど、試験の前日だけは先生が見回りに来ないことを知っていたんで、試験の前日は大人に交じって堂々と映画を観てましたね。でも、いちばん大きいのはオレ自身の性格だろうね。ウソや言い訳を考えるのが抜群にうまかった(笑)。オレ、自分では人を殴ったことないんだけど、番長にうまく取り入って、「オレをイジメると番長が来るぞ」と言い回っていた。コウモリ男とかネズミ男とか呼ばれてましたよ。自衛隊でもそうでした。本宮ひろ志は自衛隊を辞める前日に木刀で性格の悪い先輩を追い掛け回したりしてたけど、オレは目立たないように影でうまく立ち回ってましたね。でもねぇ、オレのことを見破っていた上官もいて、「お前の軍隊は真っ先に全滅する」と言われたことを今でも覚えています(苦笑)。

──武論尊先生がジャギのことを深く愛している理由が分かったような気がします。『下流の生きざま』では、故ちばあきお先生とのエピソードも印象に残りました。ちばあきお先生といえば、野球漫画『キャプテン』『プレイボール』で当時の中高生たちに多大な影響を与えた方でした。

武論尊 素晴らしいスポーツエンターテイメント作品だったよね。オレが原作者として売れる前から、あきおさんにはずっと世話になっていたんです。家が近所で、オレの住んでたマンションにあきおさんの仕事場があって、アシスタントの食事を作る際に1食分多く用意してくれて、いつも食べさせてもらっていたんです。しばらくして、オレは『ドーベルマン刑事』が初めてヒットして、有頂天になっていた。「印税ってこんなに入ってくるもんなんだ」と浮かれて、タクシーで熱海まで行って夜通し遊んで、待たせていたタクシーに乗って帰ってくるなんてことをやってたんですよ。よっぽど、オレの態度を見かねたんでしょう。ある日、あきおさんがオレを呼び出して、「最近のお前、かっこ悪いぞ」と諭してくれたんです。あきおさんに言われるまで、自分ではまったく気が付いてなかった。あきおさんのひと言がなければ、ヒット作を一本出しただけでオレは消えていたかもしれない。


画像
                       夜の街が大好きな武論尊先生。
            「最近は2勤1休ペースだよ。ウコンの力をよく呑むようになったしなぁ」。
                        稼いだ分は遊ぶって素敵!


──ちばあきお先生、作風と同様にとてもマジメな方だったんですね。

武論尊 オレが遊んでいる間も、あきおさんは仕事場に篭ってずっと漫画を描き続けていたはずですよ。仕事に対してあまりに真剣すぎて、それで苦しくなって、途中からお酒に逃げるようになったんです。オレと違って漫画に対して、常に真摯だった。だからオレは逆に「あきおさん、そんなに真剣に頑張らなくてもいいじゃないですか」と言いたかった……。『下流の生きざま』にも書いたけど、漫画の世界で戦死していった仲間は少なくないんです。戦死というか、いわば漫画との心中ですね……。

──『北斗の拳』の戦う男たちの姿は、やはり絵空事ではないようですね。

武論尊 うん、でも戦いのない世界はないですよ。サラリーマンの世界だって、どこの世界だって、戦わないことには生きていけない。仕事を取ってきて、こなすってだけでも一種の戦いだと思うんです。格闘だけが戦いじゃない。デスクワークだって立派な戦いですよ。自分の能力をどこまで出せるかっていうね。『北斗の拳』はただの格闘漫画じゃない、これはオレたちにもっと戦えと言っているんだと多くの人たちが感じてくれたから、あれだけの評価に結びついたんじゃないかな。生きていることが戦いなんですよ。

──それで本当に辛いときは、逃げ出しちゃえばいいと。

武論尊 そうです、働く人間には、休む自由もあるわけですから。オレみたいに仕事を全部中断して、パァ〜ッと北海道の牧場にでも行ってしまえばいいんです。一度人生をリセットしてから、またイチからやり直せばいいんです。

──そんなときこそ、ジャギのように小ズルく立ち回るべきですね。そろそろ時間のようです。洋画好きな武論尊先生は『ドーベルマン刑事』はクリント・イーストウッド主演作『ダーティーハリー』(71)、『北斗の拳』はメル・ギブソン主演作『マッドマックス2』(81)からインスピレーションを得たことで有名ですが、最近はぐっと胸に迫る映画はありました?

武論尊 CGばっかりの映画や3D映画は目がチカチカして苦手なんだよ。このところはあんまり面白い洋画に出会ってないなぁ。オレの運がよかったことは、連載の話が持ち掛けられた際にタイミングよく『ダーティーハリー』や『マッドマックス2』みたいな作品に出会えたこともあるよな。まぁ、言ってしまえば、態のいいパクリじゃないですか(笑)。最近はハリウッドもダーティーヒーローが人気みたいだから、ジャギみたいな悪役が活躍する新作を考えてみようか。ハリウッドのヤツらが唸るような物語を作ってみたいね。子どもの頃からずっと洋画を観てきたオレにとって、それは大きな夢なんだよ。
(取材・文=長野辰次/撮影=名鹿祥史)

●ぶろんそん
 1947年長野県出身。中学卒業後、航空自衛隊に入隊。除隊後、本宮ひろ志の仕事場で資料係を務める。しかし、麻雀など遊んでばかりいたため、見かねた本宮の担当編集者から仕事を持ち掛けられ、1972年に漫画原作者としてデビューを果たす。以後、『ドーベルマン刑事』『北斗の拳』などのヒット作を放つ。史村翔名義でのヒット作に『ファントム無頼』『Dr.クマひげ』『サンクチュアリ』など。『北斗の拳』連載開始から30年を迎えた2013年3月、初の小説『原作者稼業 お前はもう死んでいる?』(講談社)、さらに7月に新書『下流の生きざま』(双葉社)を上梓した。


●『下流の生きざま公式ツイッター』
https://twitter.com/futabasha_karyu

●武論尊が語る『下流の生きざま』
http://youtu.be/wDq-4Vhjozk

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

マクロミルへ登録
『北斗の拳』原作者・武論尊が語る自衛隊時代、そして、恩人ちばあきおに伝えられなかった言葉 NAMAENAKIのつぶやき/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる